信用取引を始めたばかりの頃、僕がまったく決めていなかったのが「1回でいくら買うか」でした。

損切りは-8%と決めていました。監視する銘柄も決めていました。でも金額だけは、そのときの気分と買付余力で決めていました。結果どうなったかというと、値動きが大きい日ほどポジションが大きくなり、大きくなったポジションほど怖くて損切りできない、という一番まずいループに入りました。

この記事では、その反省から作り直した資金管理ルールを、実際の数字ごと公開します。

「いくら買うか」が決まっていないと、損切りルールは機能しない

まず前提の話です。

損切り-8%というルールは、それ単体では痛みの大きさを決めていません

ポジション金額-8%になったときの損失
30万円-2.4万円
65万円-5.2万円
200万円-16万円
500万円-40万円

同じ「-8%」でも、痛みは20倍近く違います。そして人間は、痛みが大きいほどルールを守れなくなります。損切りルールを守れるかどうかは、意志の強さではなくポジションサイズで決まっているというのが、僕がたどり着いた結論でした。

なので順番はこうなります。

  1. 1トレードで失ってよい金額を決める
  2. そこから逆算してポジション金額を出す
  3. ポジション金額から同時保有できる銘柄数を出す

「いくら買えるか」ではなく「いくら失えるか」から始めるのがポイントです。

ステップ1:1トレードで失ってよい金額を決める

ここは理論ではなく、自分の実測値で決めました。

過去のトレードを振り返って、「この含み損なら、画面を見ていても平然としていられた」という金額と、「これ以上になると手が動いて余計なことをした」という金額の境目を探しました。

僕の場合、その境目はだいたい5.2万円でした。

そして後から気づいたのですが、僕の運用資金は260万円なので、

5.2万円 ÷ 260万円 = 2.0%

ちょうど2%でした。投資の世界で昔から言われる「2%ルール」(1トレードのリスクを資金の2%以内に抑える)と偶然一致していたわけです。

これは逆に言うと、2%ルールは机上の数字ではなく、多くの人が実際に耐えられる水準を経験的に言い当てているということなのかもしれません。もちろん個人差はあるので、まずはご自身の「平然と眺められる含み損」を書き出してみるのをおすすめします。理屈で決めた数字は、含み損が出た瞬間に守れなくなります。

ステップ2:損切り幅から逆算してポジション金額を出す

失ってよい金額と、損切り幅が決まれば、ポジション金額は割り算だけで出ます。

ポジション金額 = 許容損失額 ÷ 損切り幅
             = 5.2万円 ÷ 8%
             = 65万円

1銘柄あたり65万円まで。

この計算の便利なところは、損切り幅を変えたときに自動でサイズが調整されることです。

損切り幅許容損失5.2万円のときのポジション金額
-5%104万円
-8%65万円
-10%52万円
-15%約35万円

値動きの荒い銘柄で損切りを深くするなら、そのぶんポジションは小さくする。値動きが穏やかな銘柄なら大きく持てる。リスクの量が銘柄によらず一定になるわけです。

ステップ3:同時保有数を決めて、レバレッジを確認する

僕は同時保有を最大4銘柄にしました。

65万円 × 4銘柄 = 260万円
260万円 ÷ 運用資金260万円 = レバレッジ 1.0倍

つまり、フルポジションでもレバレッジは1.0倍です。信用取引の口座を使っていますが、実質的には現物と同じ建玉量しか持ちません。

「信用取引なのにレバレッジ1倍?」と思われるかもしれません。ここは意図的です。信用取引を使う理由は、僕の場合は倍率ではなく、

  • 売り建て(空売り)ができる
  • 同じ資金を1日に何度も回転させられる(差金決済の制限を受けない)
  • 逆指値などの注文がツール側で扱いやすい

の方にあります。レバレッジは信用取引の目的ではなく、副作用という整理です。

見落としがちな制約:そもそも「1単元も買えない」銘柄がある

ここは実際に運用してみて痛感した部分です。

日本株は原則100株単位(1単元)です。ポジション上限が65万円ということは、

65万円 ÷ 100株 = 6,500円

株価6,500円以下の銘柄しか、1単元すら買えないということになります。

僕は半導体セクターを中心に監視しているのですが、実際に照らし合わせるとこうなりました。

買える買えない(1単元の金額)
ローム 4,331円東京エレクトロン 55,500円(555万円)
ルネサス 3,442円ディスコ 58,480円(585万円)
SUMCO 3,357円キオクシア 46,500円(465万円)
ソシオネクスト 1,912円レーザーテック / アドバンテスト / イビデン ほか

監視していた12銘柄のうち、実際に買えるのは4銘柄だけでした。スクリーニングツールが「買いシグナル」を出しても、そもそも発注できない銘柄が並んでいたわけです。

対応の選択肢はいくつかあります。

  • 同時保有数を減らす(4→2にすれば1トレード130万円)※ただし分散が効かなくなる
  • レバレッジを上げる ※これは後述の理由で見送りました
  • 単元未満株(1株単位)を使う ※現物のみで信用取引はできない証券会社が多い
  • 買える銘柄だけを監視対象にする ← 僕はこれにしました

高額な有名銘柄をウォッチリストに入れておくのは、気分は上がりますが、資金と噛み合っていないならシグナルが出るたびに「買えないのに気になる」というノイズを増やすだけでした。

フルレバレッジ(2.7倍)を検討して、やめた理由

正直に書くと、僕は一度「レバレッジを目一杯かければ、資金1,000万円までの時間を短縮できるのでは」と考えました。

信用取引の委託保証金率を考えると、260万円の資金で理論上は約2.7倍まで建てられます。

そこで、これまでのトレード成績をもとに、レバレッジ倍率を変えて何度も試行するシミュレーションをしてみました。結果はこうです。

項目フルレバレッジ(2.7倍)
追証が発生する確率14.7%
資金が半分以下になる確率32.3%
最終資産の中央値レバレッジ2.0倍のときより低い

3回に1回は資金が半減し、7回に1回は追証。そして何より、倍率を上げたのに中央値が下がっているのが決定打でした。

これは「複利の非対称性」で説明がつきます。資産が-50%になったあと元に戻すには+100%必要です。レバレッジを上げると、上振れの幅より下振れのダメージの方が効いてくるので、ある倍率を超えると期待値が上がっているのに中央値は下がるという現象が起きます。

平均値が良く見えても、それは「ごく稀に大勝ちするシナリオ」が引き上げているだけで、自分が実際に歩む1本の道は中央値に近いところを通ります。

なのでフルレバレッジは見送りました。今はレバレッジ1.0倍から始めて、ルールを30回連続で守れたら少しずつ上げる、という段取りにしています。

まとめ:資金管理は「表」にして手元に置いておく

最後に、僕が実際に使っている設定を一覧にしておきます。

項目設定根拠
1トレードの最大損失5.2万円(資金の2%)平然と眺められる含み損の実測値
1ポジションの金額65万円5.2万円 ÷ 損切り8%
同時保有最大4銘柄(レバレッジ1.0倍)65万×4=260万
対象銘柄1単元65万円以下刻めない銘柄は物理的に対象外
損切り発注と同時に逆指値。例外なし損切りの記事

この表を作ってから、注文画面の前で悩む時間がほぼゼロになりました。金額は計算済み、損切り位置も計算済み、あとは条件に合う銘柄が来たら入れるだけです。

資金管理は、相場を予想する作業ではなく、自分が判断しなくて済む範囲を広げる作業なのだと思います。

よくある質問

Q. 資金が少ない(50万円など)場合はどうすればいいですか?

計算式は同じです。50万円の2%は1万円なので、損切り-8%ならポジションは12.5万円。1単元1,250円以下の銘柄が対象になります。かなり狭くなるので、単元未満株が使える証券会社を検討するか、対象を絞って1〜2銘柄で回すことになると思います。無理に銘柄数を増やすより、ルールが機能する範囲でやる方が優先です。

Q. 「資金の2%」は多い?少ない?

2%は比較的スタンダードな水準です。1%まで下げる人もいますし、集中投資派は3〜5%を取ることもあります。ただ数字そのものより、含み損が出ているときに冷静でいられるかの方が大事です。決めた数字で実際に含み損が出たとき、余計な操作をしたなら、その数字は自分には大きすぎます。

Q. 損切りにかからず、含み損のまま持ち越した場合もカウントしますか?

僕はカウントしています。逆指値を置いている限り、その建玉の最大損失は5.2万円で確定しているので、同時保有4銘柄なら「最大で20.8万円の損失リスクを抱えている」と把握できます。この合計額(トータルリスク)を見ておくと、無意識にポジションを増やしすぎるのを防げます。

Q. 利確のルールはどう決めていますか?

正直、ここはまだ固まっていません。損切りが-8%で頭打ちなのに対して、勝ちトレードは伸ばせるだけ伸ばした方が成績が良い、という検証結果は出ています。ただ「どこで伸ばすのをやめるか」の基準がまだ作れていないので、現状は保有期間の上限を決めて手仕舞う運用にしています。ここは検証が進んだら別記事で書きます。


※この記事の内容は個人の見解・体験談であり、投資助言ではありません。記載の数値は筆者自身の運用実績・シミュレーションに基づくもので、将来の成果を保証するものではありません。信用取引は元本を超える損失が生じる可能性があります。委託保証金率や追証の条件は証券会社によって異なるため、必ず各社の公式情報をご確認ください。